ピエール・バジール(Pierre Bazire 1938~ フランス)
仏 ナイーヴ派
素朴派(そぼくは)とは、主として、19世紀から20世紀にかけて存在した、絵画の
一傾向のこと。「ナイーヴ・アート」(Naïve Art)、「パントル・ナイーフ」(Peintre Naïf)
と呼ばれることもある。
一般には、画家を職業としない者が、正式の教育を受けぬまま、絵画を制作している
ケースを意味する。すなわち、その者には別に正式な職業があることが多い。
素朴派の作品は、対象を写実的に描写した、具象的な絵画であることがほとんどで
あることから、一般的には前衛性がないが、例えば、アンリ・ルソーの一部の作品など
については、前衛的な要素(幻想性等)を認める考え方も強い。
正式な美術教育を受けたことのない作家によって制作され、独学ゆえにかえって素朴
さや独創性が際立つ作品をさす。
ナイーヴ・アートの作家は、独学で手法や構成を学び、ほかの職業で生計を立て
ながら、個人的な楽しみとして制作している場合がほとんどである。
近年では、75歳になってから農民や田園風景を描き始めたグランマ・モーゼス
(アンナ・メアリー・ロバートソン・モーゼス)が有名だが、それまで彼女は農業に従事
していたという。ナイーヴ・アートの特徴としては、明るい色彩や具象的で緻密な描写、
空間表現の平坦さなどが挙げられる。
この動向は、20世紀初頭にピカソやルノアールをはじめするパリの芸術家が、税関
に勤めながら展覧会に出品していたアンリ・ルソーの絵画を評価したところから始
まった。
そしてモダニズムの作家たちによる素朴な形態や様式の援用(プリミティヴィズム)や、抽象表現主義の発展とともに、
ナイーヴ・アートは現代美術の動向のひとつとして認められるようになった。
ほぼ同じ意の用語として「アウトサイダー・アート(英)」や「アール・ブリュ(仏)」がある。
これは、狭義には精神病患者や囚人が生み出す作品を指す場合が多く、近年、
ヘンリー・ダーガーが紹介されたことにより周知された。
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